まれに出題される法律用語『権原』とは?
平成27年の1級土木では、最近ほとんど見たことがなかった言葉が出題された。
調べてみたところ、平成12年と平成15年に出題されたが、その後の出題はない。
12年ぶりに出題された言葉、それは『権原』(けんげん又はけんばら)であり、『権限』(けんげん)の誤植ではない。
似てはいるが、『権原』と『権限』は言葉が違うから、もちろん意味も違う。
純然たる法律用語であり、そういう言葉の意味の違いまで解説しているのは、多分、ここの以外はないであろう。
具体的には、〔H27A-No.57〕の問題で、次のように出題された。

■〔No.57〕 河川区域内において、河川管理者に許可を受ける事が必要とされる行為に関する次の記述のうち、河川法令上、誤っているものはどれか。
 (1) 河川区域内の地下に埋設される農業用水のサイホンを新たに設置するときは、土地の占用の許可を受ける必要がある。
 (2) 河川管理者以外の者が権原に基づいて管理する土地においては、土石の採取及び土石以外の竹木、あし、かやを採取するときは、土石等の採取の許可を受ける必要がある。
 (3) 河川管理者以外の者が権原に基づいて管理する土地において新たに公園を整備するときは、土地の占用の許可を受ける必要がない。
 (4) 河川管理者の許可を受けて設置された排水機場の機能を維持するために行う排水口付近に積もった土砂の排除については、土地の掘削等の許可を受ける必要がない。

ここで、(2)も(3)も『権原』(けんげん又はけんばら)という言葉が使用されている。
『権原』とは、ある行為を正当なものとする法律上の権利や法律的な背景をいう。
具体的には、自分の土地にリンゴの木を植えたとすると、自分が植えても他人が勝手に植えたとしても、そのリンゴの木は自動的に自分のものになってしまう。これは自分がその土地の所有者であるという『権原』があるからである。
似たような言葉であるが、『権限』の場合だと、ある行為が法律上や契約上、正当と認められる能力や範囲をいう。
たとえば、現場代理人が持っている『権限』などがある。
ここでは、(2)の場合、河川管理者の管理する土地であれば土石等の採取の許可が必要である。
ただし、河川管理者以外の者が『権原』に基づいて管理する土地の場合だとすると、その『権原』により土石等の採取の許可が不要になるので、(2)が誤りとなっている。
なお、(3)にも『権原』という言葉が出てくるが、これは河川法第24条(土地の占用の許可) で、「河川管理者以外の者がその『権原』に基づき管理する土地を除いて、河川管理者の許可が必要」と定められているので、前半の言葉がそのまま当てはまり、河川管理者の許可は不要で正しいことになる。(28.2.26)



カンタン!土量変化率の話
 
土木施工の試験に毎回のように出題されるものに、土量変化率の計算がある。
 これは本当に重要で、学科試験だけでなく実地試験でも出題される。
 解説書などを見ると結構難しそうに書いてあるものが多いが、基本は非常にカンタンだ!
 まず、計算の基準となるのが「地山土量」であり、地山というのは自然状態の土のかたまりという意味だ。
 注意しなければならないのは、「山」の形をしていなくても、平らな地盤でも、凹んだ地盤の所でも、自然の状態ならば「地山」と言う点だ。
 そう考えると、「山」と名前が付いているだけ余計な感じがする。
 それはさておき、この地山から1m
3だけバックホーかパワーショベルで掘り出したとする。
 そうすると土の粒子がバラバラにほぐされ、中に空気が入るので、体積が若干増える。
 仮に1.2倍に体積が増えるとすると、体積は1.23ということになる。
 この時の1.2が「ほぐし率(L)」というもので、ちなみにほぐすという意味の英語(Loose)から来ているようだ。
 また、この時の土量を「ほぐし土量」という。
 ほぐし土量の状態でダンプトラックに積み込むから「運搬土量」ともいう。
 さて、現場に到着すると、ブルドーザか何かでまき出され、ローラーで締固められる。
 その結果、圧縮されて土の中の空気が追い出されるので、だいたいはもとの地山よりも体積が減少する。
 仮に元の地山よりも0.9倍の体積に減少したとすると、体積は0.93ということになる。
 
この時の0.9が「締固め率(C)」というもので、これも締固めるという意味の(Compact)から来ているようだ。
 また、この時の土量が「締固め土量」というものであり、締固めて盛土するから「盛土量」ともいう。
 ということで、地山土量を基準に、体積が膨張したり、収縮したりする割合を意味しているわけだ。
 なお、ほぐし土量又は運搬土量をほぐし率(L)で割ると、最初の地山土量が求められる。
 同様に、締固め土量又は盛土量を締固め率(C)で割ると、最初の地山土量が求められることも一緒に覚えておこう。



「延べ」が「延べ」ではなかった話!
 土量変化率を用いる問題は、施工に必要な地山土量、運搬土量、締固め土量を計算で求めたりする問題が非常に多いが、バックホウを題材にした問題では、所要日数や延べ日数を求める問題で出題されることが多い。
 特にバックホウの場合で注意が必要なのは、バケットの平積み容量が「ほぐし土量」表示なので、地山土量を求める場合は、逆にほぐし率を割り戻してやらなければならないことである。
 (地山土量×ほぐし率L=ほぐし土量
 ∴ ほぐし土量÷ほぐし率L=地山土量 又は、 ほぐし土量×(1/ほぐし率L)=地山土量)
 これに関し、平成18年の2級実地で、結構異常な問題が出題されたのでご紹介する。

〔設問1〕 A現場の切土3,000m3(地山土量)と、土取場の土をバックホウで掘削し、B現場へダンプトラックで運搬して盛土6,000m3(締固め土量)を行う土工工事に関して、次の文章の[   ]の中の(イ)〜(ホ)に当てはまる適切な数値を下記の数値から選び解答欄に記入しなさい。ただし、次に示す[条件]により計算するものとする。

[条件]
          q0×K×f×E
      Q=───────×3,600
             Cm

      Q=バックホウの時間当たりの作業量(m3/h)
      q0:バケット平積容量  0.6m3
      K:バケット係数    0.8
      f:土量換算係数 (与えられた条件により算出)
      C:土量変化率     0.80
      L:土量変化率     1.20
      E:作業効率      0.75
      Cm:サイクルタイム  36sec
        ダンプトラック積載容量(ほぐし土量)は5.0m3とする。

 (1) A現場の切土を、稼働時間が5時間/1台・1日のバックホウ2台を用いて掘削したときの
延べ掘削作業日数は[  (イ)  ]日である。
 (2) A現場(切土)からB現場(盛土)への運搬に使用するダンプトラックの
延べ台数は[  (ロ)  ]台である。
 (3) B現場への運搬を、運搬回数9回/1台・1日のダンプトラックを使用して
延べ掘削日数[  (イ)  ]日で終了させるときの1日当たりの必要台数は[  (ハ)  ]台である。
 (以下省略)

   [数値] 7、 8、 10、 20、 72、 80、 480、 600、 720
        2,400、 3,000、 3,600、 4,500


 まず、(1)であるが、ここではバックホウの時間当たりの作業量を表す式を利用して1時間当たりの作業量を求め、全体の地山土量3,000m3を運搬するのに必要な日数を求めればよい。
 ここで、バケット平積み容量0.6m3は「ほぐし土量」表示のため、地山土量に割り戻す必要があるので、この場合の土量換算係数fは1/1.20(又は÷1.20)になる。

         q0×K×f×E
      Q=───────×3,600
            Cm

         0.6×0.8×(1/1.20)×0.75
       =────────────×3,600
                36

       =0.6×(1/1.20)×0.8×0.75×100=0.5×0.6×100=30(m3/h)

 運搬に必要な地山土量は全部で3,000m3あり、1日の作業時間は5時間でバックホウは2台使用されるので、必要な所要作業日数は、3,000÷(30×5×2)=10日となる。
 ここでは、「
延べ」掘削作業日数で答えなければならないため、1台当たり10日なので2台では20日になる。

 次に、(2)は、地山土量3,000m3を運搬土量に変換すると、L=1.20より、3,000×1.20=3,600m3(運搬土量=ほぐし土量)
 これをほぐし土量5.0m3のダンプトラックで運搬するため、延べ台数は、3,600÷5.0=720台となる。

 (3)は、ほぐし土量5.0m3のダンプトラックで1日1台当たり9回運搬するため、1日合計では5×9=45m3運搬する。
 これを(1)の「延べ」日数20日で運搬し切るようにすると、1台当たり20日間に運搬可能な土量は、45×20=900m3
 ここでは、(2)のとおり全部で3,600m3あるので、3,600÷900=4台

 ここで、よく見ると、[数値]選択欄の中には「4」という数字はない。
 ということは、これで答えてはいけないということになるようだ。

 そこで仮に、(1)の延べ掘削日数を「
所要」掘削日数と理解すると10日になるので、1台当たり10日間に運搬可能な土量は、45×10=450m3 
 ここでは全部で3,600m3あるので、3,600÷450=8台となり、[数値]選択欄の中にあるので、これが解答になるようである。
 ということは、(1)の方も20日ではなく、10日が正しいということになる。 

 しかしながら、これでは延べ日数ではなくて、所要日数ということになってしまう。

 念のため、岩波書店「広辞苑」で意味を調べてみたが、延べとは、同一のものが何回も含まれていても、そのそれぞれを一単位に数えた総数を言うのだそうである。
 また、英語ではトータル、つまり合計を意味するようだ。
 つまり、2台並行で作業していても、1台当たりで全体の作業量を考慮するのが延べの意味になるようである。
 ということは、延べ日数で考えた場合に選択肢が存在せず、「所要」日数で考えた場合に問題なく解けるこの問題は、どうやら出題ミスだったようだと思わざるを得ない。



まぎらわしい単位!
 
本当に常識と違うのがこの土木や建築の世界のルールのようであるが、平成16年に出た1級土木の問題がまた非常にまぎらわしかった。

【問題No.16】 道路橋に使用する鋼材の曲げ加工に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1)冷間加工を行う場合は、局部的に大きなひずみを与えないようにし、鋼材の機械的性質などの特性が損なわれないようにする。
(2)冷間加工により曲げ加工を行う場合は、鋼板の外側には加工前にポンチを打たない。
(3)冷間曲げ加工を行う場合、折曲げ部のエッジは、加工前に最小0.1tの面取りを行うのを原則とする。
(4)調質鋼のような焼き入れ、焼きもどし処理の施された鋼材は、冷間加工を行ってはならない。

 (1)や(2)はそのとおりで、(4)は冷間加工はOKであるが熱間加工が駄目なので、解答は(4)である。
 ところで、(3)の最小0.1tの面取りって、普通は0.1t=100kgと考えてしまいそうですよね。
 でも、それではつじつまが合いません。
 見境もなく100kgも削ってどうするんだ〜という感じです。
 実は、この場合のtは板厚を表す単位で、1t=1oを意味しています。
 したがって、この場合は0.1t=0.1o面取りすることになります。
 本当に、分かってしまえば、な〜んだという感じですね。




「石灰」と「生石灰」と「消石灰」?
 
土木施工では、地盤改良などで使用するものということで、石灰が関係する問題が結構出題されている。
 具体的には、高含水比粘性土の軟弱地盤対策では石灰パイル工法や、深層混合処理工法等が関係しているし、舗装では、路床の安定処理、路盤の安定処理にも登場する。
 それ以外にも、高炉セメントの材料にもなっているようだ。
 この石灰という場合、ほとんどの場合はそのまま「生石灰(きせっかい)」、薬品名で言うと「酸化カルシウム」のことを意味するようである。
 生石灰とは、天然の石灰石を950℃以上に焼成したものをいい、水を加えるとセメントのように水和反応が発生し、発熱する。
 吸湿性も強く、地盤の含水比を低下させることができるため、かなりの昔から地盤改良材として使用されてきたようである。
 生石灰では、皮膚に付くとやけどする恐れもあるので、これに良質な水を加えて水和反応を起こさせたものが「消石灰(しょうせっかい)」、薬品名では水酸化カルシウムである。
 消石灰は、一般には運動場のライン引きに用いられている。
 最近出題された問題の中では、「消石灰」という言葉はまったく出たことがないようであるが、舗装の上層路盤の路盤材の処理の際に、少量の消石灰を散布混合することがあるようである。



「混和剤」と「混和材」と「混和材料」の違いは?
 
ご存じのとおり、コンクリートは、@セメント、A水、B細骨材(砂)、C粗骨材(砂利)、D混和剤から成り立っている。
 ところで、この「混和剤」が、「混和材」だったりすることがあるので、大変まぎらわしい。
 この混和剤と混和材の違いが平成15年の2級で出題されたことがあるので、ご紹介する。


【問題No.6】 コンクリートの配合に関する次の記述のうち適当なものはどれか。
(1)打設する部材の最小寸法が小さいほど、鉄筋の配置が密なほど、スランプは大きくする。
(2)細骨材率s/aとは、コンクリート中の粗骨材の体積に対する細骨材の体積の比率である。
(3)圧縮強度のバラツキが大きいほど、強度の割増し係数を小さくしなければならない。
(4)混和剤の容積は、練上りコンクリートの容積に算入するが、混和材の容積は算入しない。

 打設するコンクリートが、部材や鉄筋の間に回り込まなければならないので、適当な解答は(1)である。
 なお、(2)の細骨材率は骨材全体に占める細骨材の割合であり、(3)の強度の割増係数は大きくなる。
 (4)が問題なのだが、「混和材」はセメント量の5%以上を入れる配合設計上の材料ということになっているので、混和材の容積は算入される。
 これに対して、「混和剤」はセメント量の1%未満しか入れない一種の薬品であり、混和剤の容積は練上がりコンクリートの容積に算入しないため、誤りということになる。
 なお、具体的には、「混和材」には高炉スラグ、フライアッシュがあり、「混和剤」には、AE剤、遅延剤、減水剤、流動化剤などが該当する。
 さらに、「混和材」と「混和剤」をあわせて「混和材料」ということらしい。




堤防の内側ってどこよ!?
 
土木施工は、慣れていないと結構、ひっかかるものが多すぎる世界だ(実際、ひっかかりっぱなし)。
 いろいろあるけれど、堤防もそうだ。
 みなさん、堤防の内側ってどこだか分かります?
 河が流れているところではありません。
 河が流れているところは堤防の外側になります。
 河が流れていない、民家の建ち並んでいるところが堤防の内側なのです。
 結構、ひっかかることですが、堤防の内側を堤内地といい、堤内地は民家側なのです。
 同様に、堤防の外側を堤外地といい、これは河が流れている側になります。
 なんか、常識とまったくちがいますね。
 何でこうなったかというと、河川流域に住んでいる人たちの歴史があったようです。
 河の水というのはふだんは良いけれど、いったん氾濫すると強力な外敵となります。
 その外敵から身を守ってくれるものということで、堤防があったようです。
 だから、堤防によって住民の生活が守られている区域が堤内地であり、守られていない区域が堤外地というわけです。



ボルトが先か溶接が先かの話
 
土木施工では、時々、溶接と高力ボルト摩擦接合を併用する場合、どちらが先で、どちらが後かという問題が出題される場合がある。
 鋼橋の高力ボルトの施工ということで出題されるが、この場合は、溶接が先で、高力ボルトが後になる。
 理由は、先に高力ボルト接合を行うと、溶接によるゆがみによって摩擦接合部分が影響を受けるためだそうである。
 具体例でいうと、平成12年の1級の次の問題がそうである。

【問題No.17】 高力ボルトの施工に関する次の記述のうち適当なものはどれか。
(1)トルク法によるボルトの締付検査は、各ボルト群の10%のボルト本数を標準として、トルクレンチによって行う。
(2)部材の接合にあたり、溶接と高力ボルト摩擦接合とを併用する場合は、高力ボルトを締付けてから、溶接するのを原則とする。
(3)回転法による締付けは、F10Tのみに用いるものとする。
(4)耐力点法による締付けボルト軸力は、使用する締付け機に対して1つの製造ロットから無作為に抽出した3組のすべての試験値が所定の範囲内に入らなければならない。

 解答自体は(1)が正解であるが、(2)は溶接してから高力ボルトの締付けを行うので誤りとなっている。
 なお、(3)はF8Tというものがあり、(4)は5組で試験するので誤りとなっている。

 ところで、面白いことに、実は同じような問題が建築施工でも出題されている。
 さらに面白いことに、建築施工では高力ボルト接合を行った後で溶接を行うのを原則とする。
 つまり、まるっきり逆の立場なのだ。
 その理由は、溶接による強度の変化があっても、安全側に作用するためだそうである。
 具体例では、平成13年の1級建築施工で、次のような問題が出題されている。

〔No.5〕 鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ベースプレートのアンカーボルト孔の径は、ボルトの径に5oを加えた大きさとしてよい。
2.引張力とせん断力を同時に受ける高力ボルト接合部の許容せん断力は、引張力を受けないときの許容せん断力より低減させる。
3.溶接と高力ボルトを併用する継手で、溶接を後で行う場合は両方の許容耐力を加算してよい。
4.高力ボルトの相互間の中心距離は、ボルト径の2倍以上とする。

 解答自体は4番が誤りであり、高力ボルト相互間の中心距離は、ボルト径の2.5倍以上が正解である。
 3番がこの場合の問題点であるが、これが正しいのである。
 つまり、高力ボルトで接合してから溶接すると、両方の許容耐力を加算できる。
 だから、建築施工では、高力ボルトで接合してから溶接するのである。
 逆に、溶接してから高力ボルトで接合すると、許容耐力は足し算以下になるということだ。
 その理由は、先に溶接すると熱で板が曲がり、高力ボルトに所定の圧力を与えることができない場合があるためだそうである。



複雑奇怪なダムのグラウチング!
 グラウトは基礎や地盤面のすき間を埋める処理のためにセメントミルクを注入することで、このような処理工法をグラウト工とかグラウチングという。
 ダムでは、水が絶対に漏れないようにするためグラウチングが非常に重要で、たくさんのグラウチングの名前があるが、それだけにその方面に関係のない方にはさっぱり分からない話になっている。
 これに関する出題例としては、平成15年の1級で次の問題がある。

〔No.33〕 ダムの基礎グラウチングに関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1) カーテングラウチングは、貯水池からの漏水を押さえるためにダム基礎及び左右岸地山に対してカーテン状の難透水ゾーンを形成するものである。
(2) ブランケットグラウチングは、フィルダム遮水ゾーンの基礎に対して、基礎浅部の浸透流に対する安定性の向上、コア材料の流失防止のための遮水性の向上を目的とするものである。
(3) スラッシュグラウチングは、地表面から他のグラウチングを実施する場合、岩盤の割れ目からグラウトがリークするのを防ぐために、割れ目をねらって事前に高圧で表層部(1〜2m)を改良することを目的とするものである。
(4) コンソリデーショングラウチングは、基礎掘削などの影響による岩盤の緩みに対して、コンクリートダムあるいはフィルダム洪水吐き等の基礎の変形防止、一体化を目的とし、基礎面全体にわたり行うものである。

 まず、(4)のコンソリデーショングラウチングであるが、これはダム本体(提体)の基礎部全体にわたってグラウチングすることを意味するが、(4)を見るとフィルダムの洪水吐き(余水吐き)の基礎処理も、コンソリデーショングラウチングと言うのであろう。
 これは石を積み上げたロックフィルダムではダム施工前に行われるが、コンクリートダムの場合はダム本体が数リフト打ち上がってから行われるようだ。
 (2)のブランケットグラウチングというのはロックフィルダム等で使用される言葉であり、コンクリートダムでは使用されない。
 ロックフィルダムでは、コアと呼ばれる水を止めて浸透させない遮水ゾーンがあり、そこの基礎部全体に対してコンソリデーショングラウチングよりもやや深めに行われるグラウチングがブランケットグラウチングになる
 また、(1)のカーテングラウチングであるが、これは特に水の浸透防止を図らなければならないダムの最重要部分、つまり、コンクリートダムならばダムの水が直接接する部分(前面部)の基礎部、ロックフィルダムならばコアの基礎と接する部分で、一般的にはダム断面の中央部底部付近に「監査廊」というトンネル状の廊下をそれぞれ設けるが、ここの廊下の床にかなり深めの穴をあけてグラウチングすることを言うらしい。
 しかも、カーテングラウチングはある程度、提体の盛り立てが進んでから実施されるようだ。
 なお、コンソリデーショングラウチングとカーテングラウチングは砂防ダムの場合でも行われるが、砂防ダムではもちろん監査廊というのはない。
 (3)のスラッシュグラウチングは、コンソリデーショングラウチングに先立って行われるもので、岩盤面の緩み箇所や割れ目箇所周囲にいったん「低圧」でセメントミルクを注入し、注入箇所内部に浸透させておくことをいうらしい。
 この問題では、「高圧」で表層部を改良するとあるので、(3)が誤りとなっている。
 高圧か低圧かはグラウト施工前に1分間の水圧を加えて様子を見るルジオンテストというもので決定し、グラウチングの際は濃度の低いグラウト材から注入を開始し、様子を見ながら濃度を高めていくが、圧力が高すぎてモルタルが吹き出すことをリークという。
 なお、グラウトを注入する孔開けは、パーカッションボーリングという衝撃力を利用する掘削速度の速いものを使用する。
 ほかにも、基礎の岩盤や岩盤と監査廊の間にすき間やゆるみがある場合に行われるコンタクトグラウチングというのもあるし、コンクリートダムではダム両岸にリムグラウトというものを施し、両岸からの浸透水を防止する。
 さらに、
コンクリートダムではコンクリートの打継目に施すジョイントグラウトというのもある
 こうしてみると、ダムというものは本当にグラウチングだらけのようで、グラウチングに異常に気を遣っていることが想像できる。



スカリファイヤとクラリファイヤの話
 世の中には名前が激しく似ているのに実は全くの無関係というものがたくさんあるが、土木施工ではこのようなものに「スカリファイヤ」と「クラリファイヤ」がある。
 スカリファイヤというのは、敷均しなどに使用されるモータグレーダに装備されるもので、ブレードでは切削困難な硬い路面の場合に使用される、つめによって路面を破砕する装置をいう。
 これに対し、クラリファイヤは水道施設やダム工事などで使用されるもので、岩石の破砕などによって発生した泥水を沈殿させ、泥だけを取り除く施設であり、同様のものにシックナと呼ばれるフィルタを使用する場合がある。




入るに入らないセグメントパズルの話
 トンネルを掘っていくシールドマシンというものは、もともとは虫が木に穴を掘っていく作業を見習ったものだ。
 崩れやすいトンネルを何とか安全に施工できないかと考えていたある人が、木造船に頑丈な孔を開けるフナ食い虫を観察して、掘削したらすぐに孔壁を固めていけばよいということに気が付き、シールド工法の開発につながったらしい。
 そんなわけで、シールド工法では掘削したらすぐにセグメントなる巨大な鉄筋コンクリート製のタイル等を孔壁表面に貼り付けていく。
 貼り付ける順番は、荷重のバランスを考えてトンネル底部から左右に均等に振っていくように貼り付けて行くらしい。
 左右の高さを合わせるようにどんどんセグメントを積み重ねていく。
 あとは天井にある最後の一枚を残すのみだ。
 ところが・・・・
 最後の一枚が入らない!
 というのは、セグメントにはトンネル中心から同心円状に積み重なるように切れ目が付いているからで、トンネルの内側が狭く、孔壁側が広くなっているからだ。
 このままではトンネルの内側から貼り付けるのは不可能なようだ!
 さあ、困った!
 あなたならこのパズルをどう解きますか?
 ちなみに、答えは一つではない。
 ・・・・・・。
 この問題に対し、あるシールドマシンでは、最後の天井面の一枚だけは内側から貼り付けるのは不可能だから、天井面に沿って横から滑り込ませるように挿入しているようだ。
 
 でも、これだと効率が悪い。
 それで最近では、天井であろうがどこであろうが同じように組み立てられるということで、六角形のものを用いたり、らせん状のものが用いられるようになってきているらしい。
 なお、土木施工の試験ではこのようなセグメントの組立方法の問題というのは少なく、かつて平成7年の2級で次のような出題があっただけのようである。

【問題No.30】 シールド工事におけるセグメント組立て作業に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
 (1)Kセグメントの組立ては、微動装置を用いて行い、周囲のセグメントを損傷させないよう留意した。
 (2)ボルトの再締付けは、ジャッキ推力の影響がなくなった時点で行った。
 (3)セグメントを速やかに組み立てるため、シールドジャッキを全部一度に引込めた。
 (4)セグメントの組立ては、エレクターを用いて行い、真円度の確保に留意した。

 先に述べたとおり、セグメントは底部から左右に割振っていくように組み立てていくから、先にシールドジャッキを引っ込める必要があるのは底部であり、(3)が誤りということになる。
 なお、この問題では、一般的な同心円状にカットされたセグメントを用いる場合で出題されており、このようなセグメントをA型という。
 A型では最後に天井面の処理に困るから、天井面用にはトンネル内側が広く、孔壁側が狭くなったK型セグメントというのを用いる。
 したがって、この問題の(1)は最後の天井面の処理で出題しているわけだ。
 なお、K型セグメントの左右には、これに合わせるように切り込みの入ったB型セグメントというのを使用する。



一服的小ネタ話
 いや、まったくたいした話ではないのだが、疲れた頭でぼんやり見ていたら気になった問題があったので、一応小ネタということで・・・
 平成16年の1級の次の問題である。

【問題No.46】 上水道管の施工に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1)配水支管の布設位置は、一般に道路幅員が広くない場合は道路の片側に、かなり広い場合は両側の歩道又は車道の両側に布設する。
(2)水道管を橋梁に添架する場合、温度変化による橋桁の伸縮に対応し、伸縮継手を橋梁の固定端側に設ける。
(3)水道管を橋梁に添架する場合、橋台付近の埋設管にはたわみ性のある伸縮継手を設け、屈曲部には所要の防護工を施す。
(4)配水管を他の地下埋設物と交差又は近接して埋設するときは、維持補修の便利性や事故発生の防止のため、少なくとも30cm以上の間隔を保つ必要がある。

 問題の解答自体は(2)になる。この場合、伸縮継手は橋梁の可動端側に設置する。
 ところで、(3)なのだが、たわみ性のある伸縮継手ってあったっけ〜?
 伸縮継手は文字どおり「伸びたり縮んだりする」継手である。
 で、たわむとは、「撓む」と書く。
 曲げられるという意味で、可とう継手の「可撓」だ。
 ああ、伸縮可とう継手のことか……って気が付いた。
 でも、それならば「伸縮性のある可とう継手」として出題しても良かったのではないだろうか?(←考えすぎ?)
 でも、これってまったく聞いたことがないぞ!
 役割がまったく異なるので、可とう継手が伸縮継手の一部でないのは確かである。
 ただ、合体したものもあるというだけだ。 



超ヒッカケ的「法線」の問題

 土木施工では、堤防の問題で時々「法線(ほうせん)」という言葉が出題される。
 法線は数学の専門用語でもあるらしいのだが、もちろんそういう意味で出題されるのではなく、堤防上の自動車などが通る上端部(天端)のへりの部分を指す言葉だ。
 ここは法肩というらしいが、この部分を川の流れに沿って平行に伸ばした線が「法線」というわけだ。
 この法線に関する問題で、最近結構ヒッカケル問題があったのでご紹介したい。

【問題No.15】 河川堤防の施工に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1)タイヤローラを用いて粘性土を締固める場合は、タイヤの接地圧を低くして施工する。
(2)ブルドーザを用いて締固める場合は、堤防法線に直角に行うことが望ましい。
(3)大型の振動ローラを用いて締固める場合は、他の機種に比べて敷均し厚を大きくすることができる。
(4)振動コンパクタやタンパは、他の機械では施工が困難な小規模の締固め等に使用する。

 この問題は2級の平成15年に出題された問題であるが、(1)も(3)も(4)も正しいので、解答は(2)ということになる。
 つまり、ブルドーザで堤防法線に直角に締固めるのではなく、水平に締固めなければならないということが正しい。
 これと非常に似ている問題で、平成13年の1級では次のような問題が出題されている。

【問題No.22】 河川の堤防法面の施工に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1)盛土の施工中、降雨が法面の一部に集中して流下すると、法面浸食の原因にもなるので、施工途上といえども適当な間隔で仮排水所を設けて降雨を流下させることが大切である。
(2)法面の締固めにあたっては、ブルドーザを堤防法線と平行に丹念に走らせて締固め、又高含水比の粘性土などでは湿地ブルドーザで締固めるとよい。
(3)法面及び法肩部は、締固めが不十分となりやすいので盛土幅よりも広く余盛りを行い、盛土端部をバックホウなどで掘削し、法面を整形する等して仕上げることが望ましい。
(4)土羽土の締固めは、盛土本体を造成した後に土を補足しながらランマなどの小型機械で締固める。この場合盛土本体部に比べて締固め度が不足しがちであり、施工は特に入念に行う必要がある。

 この問題は、先ほどの問題と同様に(1)も(3)も(4)も正しいので、適当でない解答は(2)ということになる。
 なお、(2)の後半部分は正しい。
 つまり、誤っている箇所はブルドーザを堤防法線と平行に走らせる部分だということだ。
 先ほどの問題では、堤防法線と平行に走らせて締固めるのが正しかったのに、後の問題では堤防法線と平行に走らせて締固めることが誤りとなり、法線と直角に走らせるのが正解となるのである。
 この違いは、お分かりいただけるであろうか?
 これは、注意していないと本当に分からない。
 見事なヒッカケ問題だと思う。
 実は、先の2級の問題は「堤防の施工」の問題であるが、後の1級の問題は「堤防法面の施工」の問題であり、施工している場所が微妙に違うのである。
 つまり、2級では堤防上の水平面で作業する問題なのに、1級では法面上の斜面で作業する問題なのだ。
 堤防上の水平面では、川の流れを横に見ながらブルドーザで法線と平行に運転して締固め作業ができる。
 これは、特に問題ないと思う。
 これに対して、堤防の法面ではブルドーザを傾斜させて走らせるのではなく、川の流れの正面か背中側を向き、ブルドーザで上ったり降りたりして締固め作業を行うということになる。
 だから、法線と平行というのが誤りとなり、直角に走らせて締固めるのが正解ということになるらしい.



止水板を設けてフィルター効果を狙う緩傾斜堤の裏込工

 世の中には、考えてみると非常に矛盾した話だと思うようなことが数多あるが、土木施工で出題される問題の中にも同じようなものがある。
 たとえば、平成16年の1級で出題された次の問題である。

【問題No.37】 海岸の緩傾斜堤の施工に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1) 天端被覆工の表面には、排水のために陸側に2〜5%程度の片勾配をつける。
(2) 表法に設置する裏込工は50cm以上の厚さとし、表法面からの浸透水や堤体からの浸出水に対するフィルターとしての機能を確保する。
(3) 基礎工が水中となる場合、十分な大きさの基礎とすれば根固工は必要がない。
(4) 裏込工は、吸出しを防止するため上層から下層へ粒径を徐々に大きくする必要がある。

 緩傾斜堤は、水平3に対して垂直1の3割こう配以上の緩いこう配を持った幅広い堤防であり、単位面積当たりの荷重が小さいため、軟弱地盤にも施工出来る。
 堤防の波の当たる側の表面が「表のり」であり、陸側が「裏のり」になる。
 表のりには表面を50cm以上のコンクリートで被覆(コンクリート被覆式)したり、厚さ50cm以上のブロックで被覆(コンクリートブロック張式)したり、石を張ったり(石張式)する。
 その被覆面のすぐ裏には「裏込工」が施され、粒径の大きな雑石や栗石が表面近くに配置され、奥に行くにしたがって粒径が小さくなり、一番奥には吸出し防止材として防砂シートが張られている。
 したがって、この問題の解答は(4)が誤りとなる。
 ところで(2)を見ると、裏込工はフィルターとしての機能を確保するというのが非常に分かりにくい。
 英語でfilterは名詞で「濾過材」「濾過器」であり、動詞で「濾過する」「こして取り除く」という意味になっている。
 裏込工に、このようなこし取る機能、濾過器としての機能を持たせて施工するのであろうか?
 地盤というのは水を含むと強度が低下するので、コンクリート被覆式堤防では継目や目地から水が入らないようにわざわざ「止水板」まで入っている。
 また、裏込内部に水が入って天端が崩れたり、中の栗石が沈下したりする事故があったので、コンクリート被覆式では雑石や栗石を張ったら目つぶし及び均しコンクリートを打った方がよいとされているようだ。
 (コンクリートブロック張式ではここまで徹底しておらず、波力に対して十分な抵抗力があるように施工することが基本となる。)
 このようなことを考えると、(2)の「表法面からの浸透水や堤体からの浸出水に対するフィルターとしての機能を確保する」という記述は素朴に疑問に思わざるを得ない。
 わざわざ水を通さないようにしておいて、水をこし取るように施工すると言われたら誰だって困るのではないだろうか?
 そこで、
念のために大きな所を中心に数カ所の港湾事務所の4〜5人の方に確認してみたが、即答出来る者は皆無であった。
 あるところでは、砂が吸い出されてしまうのでフィルターとしての機能は全く期待していないと言われ、別の所では、客が大勢来るような親水性を期待する穏やかな場所では、水を通すような施工もあるのではないかと言われた。
 全体的に「分からない」というのが基本的な答えであった。
 この試験では、国土交通省の第一線の現場の専門家達も分からないような問題を出題しているということが本当によく分かった。
 良くは分からないが、どうも「フィルター」という言葉が良くないのではないかと思う。
 フィルターではなくて、やむを得ず入ってしまった水を奥深く入り込む前に表面近くで流すための排水路ということなら分かるような気がするが..。



正反の観測の話

 
土木施工管理技士試験の測量の問題では、必ず「正反の観測」というのが出てくる。
 これは、トランシット測量器械の作り方が完璧でないために発生する「器械誤差」のごまかし方?という意味である。
 トランシットも工業製品である以上、作り方が完璧でないのはやむを得ないのであろうが、それにしても何でこんなにたくさんあるのだろうと思うのが、必ず出題される「誤差の名前」である。
 まず、最も出題が多いのが「視準軸誤差」。これは望遠鏡の視準軸(線)と水平軸が直角でないという意味。
 「水平軸誤差」。これは水平軸と鉛直角が直角でないという意味。
 「外心(軸)誤差」。これは、望遠鏡回転軸と水平軸が一致していないの意味。
 「望遠鏡の偏心誤差」。望遠鏡の視準線と垂直軸が交叉していないの意味。
 これらは、どれもこれもトランシットの構造上の欠陥で、欠陥品なのはしょうがないから、正反の観測というやり方でごまかすんですよということで出題されている。
 つまり、いったん気泡管が上に見える位置で普通に測定する。
 これすなわち「正位」。
 このままだと誤差が出てしまう可能性があるから、望遠鏡を上下方向に180°裏返すように回転させる。
 このままだと、あっち側の的が反対方向になって見えないから、今度は水平方向に横すべりさせて180°向きを変える。
 これによって、気泡管の位置が下に来る。
 これすなわち「反位」。
 仮に「正位」で測って+1センチの誤差だったとしたら、「反位」では−1センチの誤差になるから、両方足して2で割りましょう〜というのが「正反の観測によって消去できる」ということらしい。
 何だか面倒くさいですね。
 消去しなくてもいいから、最初から欠陥品でないものを使ったら〜〜というのは解答にならないのでしょうね。
 (というか、こういう方法ではどう頑張ったって誤差は出るらしいですが。)
 それから、これらの誤差も最初からトランシットが水平に設置されていることが条件になっています。
 ですので、トランシットが傾いていることによる誤差である「鉛直軸誤差」は正反の観測では消去できません。
 鉛直軸誤差は、たまに「垂直軸誤差」という変名で出ますので、注意が必要ですね。



思わず発汗!ケーブルエレクション工法

 土木施工管理技士試験には、横文字の専門用語を用いた工法が多く出題される。
 そのほとんどは英語であるが、中には意味を知っていると思わず吹き出したくなるようなものもある。
 その中でも、こんなことをまじめな顔して出題していいのだろうかと思うのが、橋梁架設工法の一つである「ケーブルエレクション工法」である。
 要は、ケーブルで橋の部材をつり下げながら架設していく工法であるが、ところで「エレクション」って何だか知ってます?
 スペルは違うけれど、一つは「選挙」という意味がある(election)。
 もう一つの方が問題なのですが、実はこれ、ものの本によると、日本人がアメリカに行ってふつうに「エレクション」と発音すると、みんなに大笑いされるそうです。
 つまり、「勃起」という意味になってしまうんだそうです(erection)。
 実際、erectionには、「直立」、「建立」という意味もあって、業界専門用語としては結構使われているようですが、業界外ではあんまり使ってはまずいように思います。
 ケーブルエレクション工法が、ケーブルおったて工法だったいうことは非常に率直な表現かもしれませんね〜。



超マイナーでも毎回出題「耐力点法」
 1級土木施工には毎年必ず1題は出題されるが、調べてもよく分からないのが「耐力点法」である。
 要は、高力ボルト接合方法の一つ(トルク法、回転角法、耐力点法の3つの中の一つ)なのだが、解説されている本はめったにない。
 大きな本屋さんに行っても解説本を探し出すのはとても難しい。
 7万円近くする土木の大辞典にも載っていないし、大学の先生でも知らないのが珍しくないようだ。
 何でこんなしょーもない超マイナーな工法を出題するのか、不思議といえば非常に不思議だ。
 でもこの工法、最近の橋梁工事の出世頭というところらしい。
 「本州−四国連絡橋」で初めて採用された工法で、比例限度を超えて降伏点付近で高力ボルト接合を行うため、非常に強力な接合ができ、その後の橋梁工事に大きな影響を与え、採用例が増えてきているというのがバックにあるようだ。



鉛直でも横継目の「RCD工法」
  RCD工法はローラーコンパクテッドダム、つまりローラー(振動ローラーの方)で締固めて作ったダムということですね。
 特徴は、スランプゼロ、つまり生コンが全くたれてこない貧配合の水分の非常に少ないコンクリートを用いて、水和熱を抑えながらブルドーザーを用いて一気に端から端まで作ってしまうという全面レヤー方式にあります(一般のコンクリートダムは、打設地点をブロック分けする「ブロック方式」)。
 非常に合理的かつ経済的で、工期短縮が図れる工法なのですが、施工中は重機が走り回り、パイプクーリングができないので、水和熱を抑えるために夜中に施工することもあるらしいです。
 ところでこのRCD工法、ダムの正面から見て縦の方向(鉛直方向)に継目が入っています。
 だから「縦継目」かなと思ってしまいそうですが、実はこれ、「横継目」ということで出題されております。
 何故、このような継目を入れるかというと、ダムが架け渡されている山腹の方向(ダム軸)に向かってひびが入ってしまうと水漏れの原因になるから、あらかじめ山腹と直角の方向に継目を入れておけ、ということらしいです。
 コンクリート構造物では、こういう発想が多いですね。
 ということで、この継目、「振動目地切り機」という機械で入れていきますが、縦だの横だのは施工側から見ているので、「縦」はダム上空からみて、ダムが架け渡されている山腹と山腹との間(ダム軸)という意味になり、「横」はその直角方向(ダムの厚さ方向)ということなんでしょうけど、これってちょっとふつうとは違いますよね〜。
 ダム正面から見ると「縦(鉛直)方向」に継目ができていても、「横継目」だと言うわけですから…。
 要は、見ている角度が違うといえばそれまでですが、鉛直イコール縦ではなく、横だと言うのは、何だか「木を見て森を見ず」のような感じがするんですがね〜。
※なお、横継目から水漏れしそうな感じがしますが、RCDではない一般のブロック式のコンクリートダムの場合、上流面付近の横継目部に塩化ビニール板を止水板としてはめ込むようです。



「土止め」か「土留め」か?どっちが正しい?

 土木施工管理技士の問題解きをやっていると、同じ出題年度の問題なのに、「土止め」という言葉と、「土留め」という言葉の2つが出題されている場合があります。
 この意味の違い、分かりますか?
 念のため試験実施機関側に問い合わせてみたのですが、結論から言うと、意味の違いはほとんどないのだそうです。
 では何故、2つの違う言葉を用いて出題しているのかというと、もともとの法体系の違いによります。
 労働安全衛生法では「土止め」の方を用いてきており、国土交通省の技術基準関係では「土留め」の方を用いてきている、ということに原因があるのだそうです。
 したがって、労働安全衛生法がらみの問題では「土止め」を用い、技術基準がらみの問題では「土留め」を用いて出題しているそうです。
 大変なのは、労働安全衛生法から技術基準の方に持ってきて定められている部分では、「土止め」と「土留め」の用語がごっちゃになって規定されている現実があり、出題者側でも非常に困っているんだそうです。
 一応、出題者側は技術者側の立場なので、なるべく「土留め」の方に直すようにして出題している、ということのことです。
 なお、「山止め」と「山留め」の関係も同じで、これらの言葉の違いは、法体系の当初の頃は「土止め」は仮設的な意味から、「土留め」は工法的な意味から用いられていたと考えられるそうです。



いまはなき「中震」の話

  「土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、<中震>以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、点検を行わなければならない。」
 「事業者は、明り掘削の作業を行うときは、地山の崩壊又は土石の落下による労働者の危険を防止するため、点検者を指名して、作業箇所及びその周辺の地山について、その日の作業を開始する前、大雨の後及び<中震>以上の地震の後、浮石及びき裂の有無及び状態並びに含水、湧水及び凍結の状態の変化を点検させること。」
 などといった感じで、労働安全衛生法がらみの問題で「中震」という言葉が出題される場合がある。
 ところでこの「中震」なる言葉、具体的には震度4を意味する。
 さらにこの「中震」なる言葉、正式には震度を表す言葉には存在していない!!!
 つまり、このような言葉はないにもかかわらず、労働安全衛生規則で「中震」と言っているに過ぎないようである。
 正確には、1996年3月まではこのような言葉は存在していた。
 気象庁が1949年〜1996年3月までの間、地震の震度を体感による震度と言うことで、0(無感)、1(微震)、2(軽震)、3(弱震)、4(中震)、5(強震)、6(烈震)、7(激震)というふうに分けていたらしい。
 ところが1996年4月から震度計による震度(計測震度)を気象庁が全面的に採用し、体感による震度決定を廃止したため、現在では「中震」という言葉はなくなってしまっているということのようである。
 ということで、「中震」はこの労働安全衛生規則で残ってしまった言葉であり、正式なものではなくなっているのだ。




「起業者」と「企業者」との関係
 土木工事では、「起業者」と「企業者」の2つが関与してくる問題がある。
 とはいえ、両者同時に出題されたことは現在までのところ、まだないようである。
 たとえば、「起業者」については、平成9年の1級で、次のような問題が出題されている。

【問題No.33】 建設工事に伴う騒音および振動対策に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1)建設機械の長時間使用は、結合部のゆるみや潤滑剤の不足等が生じるので、注意を払う必要がある。
(2)特定建設作業の騒音は、騒音規制法で75デシベル、振動は、振動規制法で85デシベルをそれぞれ特定建設作業の場所の敷地の境界線において超えてはならないと定められている。
(3)騒音、振動対策として<起業者>が設計時に採用・使用を決定した施工法、作業時間帯等は、仕様書に明記する必要がある。
(4)騒音、振動の影響を低減するためには、施工時間を必要最小限にとどめ、工事を円滑に実施する必要がある。

 問題の解答自体は、騒音規制法で85デシベル、振動は振動規制法で75デシベルを、それぞれ特定建設作業場所の敷地の境界線において超えてはならないと定められているので、(2)が誤りである。
 この場合の「起業者」とは、国語辞典では単純に「新たに事業を行おうとする者」という意味しかないが、仕様書に明記しなければならない者ということであるから、「発注者」ということになるのであろう。
 なお、特定建設作業を行う場合、振動規制法・騒音規制法では工事の7日前までに「元請」が市町村長に届出を行う必要がある。
 
 また、「企業者」については平成10年の2級において、次のような問題が出題された。

【問題No.32】 下水道の管きょの施工にあたって受注者が行う事前調査に関する次の記述のうち適当でないものはどれか。
(1)地下埋設物等の調査にあたっては、現地踏査を十分に行い各<企業者>の管理台帳を閲覧し、さらに埋設物が近接したりふくそうしている場合は試験掘りを行うことも必要である。
(2)地盤沈下や地下水位の低下のおそれがある場合は、一般に管きょが布設される道路に面している宅地等を対象とし、所有者の立会のもとに現況調査を実施し、関係資料を整理保存しておくことが必要である。
(3)地下埋設物等の調査により、埋設物の障害が発見された場合、下水道管きょの線形・縦断を変更し布設することが必要である。
(4)交通量の多い道路において工事を行う場合、交通量調査を実施し片側通行あるいは迂回路の選定を検討しなければならない。

 見てのとおり、この場合の「企業者」は、水道局、下水道局、ガス局等の公営企業の埋設物の管理者という意味になる。
 なお、解答の方は、(3)が適当でない解答になる。
 下水道は自然流下方式なので、勾配や線形を変更することは難しく、このような場合は発注者に報告し、必要な指示を受けることになるからである。


「河川」許可が要るけど要らない話
 河川区域(河川堤防の法尻から法尻まで(一号地+二号地+三号地))と、河川保全区域(堤防の民家側の法尻からそれぞれ原則として+50メートルまでの区域)における一定の行為は、河川の機能を管理したり、河川施設を保全したりするため、河川管理者の許可が必要とされている。
 しかしながら、出題者側と実際の河川管理許可担当者との間には意見の相違があるようで、許可が必要だということで出題されたものの中には、実際に国交省河川管理許可担当者に確認してみると、「許可は要らない」と判断するものがある。
 そのような事例が平成19年度の1級で出題されたので紹介しよう。

〔No.56〕 河川区域内及び河川保全区域で、河川管理者以外の者が工事を行う場合において、次に示す行為のうち、河川管理者の許可を必要としないものはどれか。
 (1) 橋梁の土質調査のための深さ5メートルのボーリングを高水敷で実施する場合
 (2) 河川管理施設の敷地から10メートル離れた河川保全区域内に工事の資材置場を設置する場合
 (3) 河川保全区域内において深さ3メートルの井戸を掘削する場合
 (4) 橋梁の工事内容の掲示のための高さ2メートルの看板を高水敷に設置する場合

 この問題の解答は(2)と発表されており、河川法第55条及び河川法施行令第34条により、「河川保全区域における行為で許可を要しないもの」の条件を満たしているので、(2)が許可が不要なのは問題がない(仮に5m以内だったとすると、許可が要る)。
 この問題では(4)が意見の分かれるところであり、ただ問題文だけを見た場合、「許可は要らない」と、ある許可担当者は言っていた。
 その理由は、橋梁の工事では先に河川法の許可が必要であり、そちらで既に許可を得ているためである。
 仮に、新たな許可が必要だとすれば、許可申請時に添付する工事で一時的に占有する場所を示す図面の範囲外にわざわざ看板を設置するような場合が考えられるが、通常は、看板設置場所も含めて図面で必要な箇所を提示して許可を得ているので、看板設置に係る許可は不要との考え方であった。